忍者ブログ
小説外務省
#書評 #読書 #レビュー 『小説外務省』は元外交官が尖閣問題をテーマに書いた作品である。小説と銘打っており、最後は近未来の話になるが、実在の人物も登場しており、全くのフィクションではない。登場する実在人物も鳩山由紀夫元首相ら著名人だけでなく、「杉並からの情報発信です」の山崎氏のように私の知人もいる。
尖閣諸島の問題に対しては日中で棚上げの合意があり、それを守るべきとの立場である。海上保安庁の巡視船が中国漁船を取り囲むこと自体が日中の合意に反するとする。尖閣諸島をめぐる緊張は日本側が一方的に作り出したものとする。そこにはアメリカの意図があるとする。
本書では棚上げ合意が過去の自民党政権で作り上げられたものであると説明する。ネット右翼は民主党政権の外交政策を弱腰とバッシングするが、それが問題ならば歴代自民党政権が元凶になる。
本書の領有権問題のスタンスはカイロ宣言に基づく。これは中国の領有権主張に根拠を与えるものである。その上、尖閣諸島だけではなく、竹島や北方領土の領有権も失うことになる。これを認めると北海道、本州、四国、九州以外の島々は、いつでも連合国から日本領であることを否定される危険に怯えなければならない。「カイロ宣言があるから仕方がない」というような姿勢になるならば離島に暮らす住民に思いを馳せると到底受け入れられない。著者のような政治認識はインターネット上では流布しているものの、現実社会では弱い。それは本書が指摘するようなマスメディアを使った情報操作だけでなく、地に足着いて生活する住民感覚から遊離している面があるためである。
本書は日本政府の領有権の根拠である先占に対しても先住民無視の理論と否定する。私もコスモポリタン的な立場から先占に疑問を唱えたことはある。コスモポリタン的な理想は理想として、現実政治では与野党問わず先占を前提としている。主権国家を前提とした現実政治において、どのように考えるかは大きな課題である。
また、本書は日本外交の対米従属を批判する。それは大いに賛成する。そこで日本政府が米国のパナマ侵攻を支持したことも批判されている。その結論も結構であるが、米国が侵攻理由に麻薬を挙げたことに対して、麻薬なんかを理由にして思考停止したことはけしからん、という趣旨で書かれている。これは市民感覚とギャップがある。脱法ハーブなど危険ドラッグが社会問題になっている。ここにも著者のような政治認識と現実社会のギャップが感じられる。
本書は最後に日中が戦争した場合の悲観的なシナリオが提示される。日米安全保障条約はアメリカの自動参戦を義務付けたものではなく、アメリカは尖閣諸島の紛争に参戦しない。
PR
【2014/10/01 17:37 】 | 林田力wiki | 有り難いご意見(0)
<<東京都議会・江東区議会 | ホーム | 土井たか子氏死去>>
有り難いご意見
貴重なご意見の投稿














<<前ページ | ホーム | 次ページ>>